毎月第2水曜日 午後2時より
Otemachi-Oneタワー6階 物産会談話室にて
入会ご希望の方は物産会事務局へご連絡ください。
2023年
10月
名月や棹歌一曲魚釣る 蓮池キミキミ
送火や母は子の手を握しむ 宮林 俊夫
びしょびしょの永代通り渡御続く 古谷 彰宏
明月に我が影を踏む家路かな 吉田 遊閑
名月の影に隠れる一等星 深町 牛歩
名月に映えて真下の屋根黒く 柿内 昌子
名月や継ぐ人のなき棚田にも 林田 茶楽
二度三度庭に出て観る今日の月 土田 湖亭
うたた寝の夢の中にも虫の声 土元アブケン
十五夜の無月を酒で過ごす粋 鈴木 占爐
天窓は小さき宇宙や今日の月 小池ザザ虫
9月
富士山もさかしまに立つ青田かな 蓮池キミキミ
見晴かす青田の海に白き雲 宮林 俊夫
真っ白な鷺の際立つ青田かな 古谷 彰宏
選挙カー声切れ切れの青田風 吉田 遊閑
ぽつかりと青田見下ろす雲ひとつ 深町 牛歩
老人A天塩に掛けし立葵 柿内 昌子
雷鳥の夜明けて庭の樹や何処 林田 茶楽
青田なか白帆のごとく鷺一羽 土田 湖亭
鱧切りを終へて手に取る渋団扇 土元アブケン
八郎潟今や大潟青田波 中島 鳶
ふるさとは石仏多し青田道 鈴木 占爐
手動ドア開けて下車駅青田中 小池ザザ虫
7月
子等の声遠きに聞こえ夏木立 宮林 俊夫
戸隠の奥社は遙か夏木立 古谷 彰宏
旅人の背に影つくる夏木立 吉田 遊閑
さわさわと日差し遮る夏木立 深町 牛歩
ドッグラン揃いのウェア夏木立 柿内 昌子
杖立てて風ふところに夏木立 青嶋カケス
夏木立リズム軽やかスニーカー 林田 茶楽
この余生如何に過ごさむ夏木立 土元アブケン
時空超ゆメタセコイアや夏木立 中島 鳶
背の児のすやと眠るや夏木立 鈴木 占爐
かくれんぼ探すぞ子らの夏木立 小池ザザ虫
6月
石楠花や神域にして崖多き 古谷 彰宏
見つかりし図書胸に抱く聖五月 吉田 遊閑
堀割の緩き流れにかきつばた 深町 牛歩
万緑の上野の森も維新から 柿内 昌子
熟寝(うまい)せし夢のあとさき青葉風 青嶋カケス
夏服の小便小僧駅守る 林田 茶楽
万緑を結ぶ吊り橋瀬戸の海 土元アブケン
万緑や廻廊匂ふ永平寺 中島 鳶
潮の香に山の緑は色を増し 鈴木 占爐
万緑やゆつたりと舞ふ太極拳 小池ザザ虫
5月
分校や花下に小さな椅子並べ 古谷 彰宏
側溝に色を移して花は葉に 吉田 遊閑
今朝もまた庭先借りて鳥交る 深町 牛歩
垂りでない桜しだれて池の上 柿内 昌子
信玄の隠し湯いくつ河鹿笛 青嶋カケス
鳥交る翼のかぎり草千里 林田 茶楽
許されぬ恋などなくて鳥交る 土田 湖亭
追つかけは枝から枝へ恋すずめ 土元アブケン
夜桜や気狂れし女舞ひ始む 中島 鳶
新芽吹き木々の色増し鳥交る 鈴木 占爐
鳥交る隠れ家はあの屋敷林 小池ザザ虫
4月
先づは割る温泉玉子雪見酒 古谷 彰宏
踏みさうになりて摘みたり蕗の薹 吉田 遊閑
草鞋履き柄杓手拭い伊勢参る 深町 牛歩
旅ブーム先人の夢抜け参り 柿内 昌子
相模野や雲雀鳴きつぐ方百里 青嶋カケス
竹光の侍もする伊勢参り 林田 茶楽
本流を避けて寄り添ひ残る鴨 土田 湖亭
道すがら名所旧跡伊勢参り 土元アブケン
風受けて助手席坐る犬のどか 中島 鳶
ただ一度母の手を引く伊勢参り 鈴木 占爐
野面積あはひあはひの名草の芽 小池ザザ虫
3月
藁苞の奥に濃き紅寒牡丹 古谷 彰宏
手水鉢指で押し割る初氷 吉田 遊閑
山肌に馬現れる雪解かな 深町 牛歩
北国の雪解け遠き景色かな 柿内 昌子
雪代や鵜殿の葦を越ゆるほど 青嶋カケス
春立つや旅のジーンズ物色し 林田 茶楽
忽ちに中洲の失せて雪解川 土田 湖亭
銘酒をも凌ぐ喉越し寒の水 土元アブケン
轟轟と巨石転がる雪解川 中島 鳶
風吹きて雪解の山に色の差し 鈴木 占爐
突きぬける空の青さや雪解川 小池ザザ虫
2月
鷹匠をてこずらせゐる一羽かな 古谷 彰宏
初春や座る幼児に朱椀の膳 吉田 遊閑
松の内明ける名残の粥啜る 深町 牛歩
もぐもぐと刻みお節に福来る 柿内 昌子
松の内一ツ控へる好きなこと 青嶋カケス
松の内栗きんとんの余るとは 林田 茶楽
二人して常と変はらぬ松の内 土田 湖亭
神酒注ぐ巫女の前髪初詣 土元アブケン
白銀の富士を幾たび松の内 中島 鳶
耶蘇寺へ雪駄鳴して松の内 鈴木 占爐
積ん読の埃うつすら松の内 小池ザザ虫
生きてるや三年ものの日記買ふ 射場Q(和行)
1月
たとうれば夢二好みよ雪女郎 古谷 彰宏
石段を下までつなぐ落葉かな 吉田 遊閑
出汁香り今日はおでんと妻の声 深町 牛歩
庭紅葉終りて見える新景色 柿内 昌子
煮凝や先の見えざる仲なれど 青嶋カケス
煤逃げの行く当てもなく浮世床 林田 茶楽
「戦」が今年の漢字年の暮 土田 湖亭
枝ぶりは木ごとの個性冬木立 土元アブケン
数へ日やまずはひと日を墓掃除 中島 鳶
数へ日やいつもの顔の角打ちに 鈴木 占爐
大綿や旅券の要らぬ国境 小池ザザ虫
2022年
12月
堅田訪ひ須磨を訪ひ得し翁の忌 古谷 彰宏
母帰り畳まれてある秋袷 吉田 遊閑
大根引き何度も仰ぐ空青し 深町 牛歩
今引きし大根提げて友来たる 柿内 昌子
だるまさん一ツ転んだ暮の秋 青嶋カケス
子のことば剛速球の今朝の冬 林田 茶楽
冬らしき冬との予報ふと安堵 土田 湖亭
新海苔や焙りて磯の香り立つ 土元アブケン
秋明菊楚々と夢二の乙女かな 中島 鳶
大根引き洗ふ両手に湯気の立ち 鈴木 占爐
青首をゆるりと摘み大根引き 小池ザザ虫
11月
高々と献納の稲掛けにけり 古谷 彰宏
田を仕舞ひ静まる一村後の月 吉田 遊閑
妻留守のゆるり手酌やきのこ鍋 深町 牛歩
命日の一汁一菜きのこ飯 柿内 昌子
木犀や夜も馥郁と岳飛廟 青嶋カケス
茸てふ裏街道の回し者 林田 茶楽
不漁とや高き値札の痩せ秋刀魚 土田 湖亭
気負ひ立つ案山子の肩に鳥の群れ 土元アブケン
柿落ちるこれも自然の間引きかな 中島 鳶
人知れず奥山に狩る秋の草 鈴木 占爐
「天国と地獄」風に乗りくる運動会 小池ザザ虫
10月
手漕ぎなる矢切の渡し赤とんぼ 古谷 彰宏
バス降りて立つ暗がりや虫時雨 吉田 遊閑
赤とんぼ群れて溶け入る茜空 深町 牛歩
未来ある戦禍の子供道に蝉 柿内 昌子
月こよひ湯屋の帰りの下駄の音 青嶋カケス
露の朝むかし牛乳瓶の音 林田 茶楽
落日と色を違へて赤蜻蛉 土田 湖亭
縁台に地酒一本月の客 土元アブケン
陶工の里に群れとぶ秋茜 中島 鳶
赤蜻蛉枝先揺らし刻止める 鈴木 占爐
山荘の雨戸の軋む白露かな 小池ザザ虫
9月
みな帰りひとり首振る扇風機 吉田 遊閑
嘉門次の写真色褪せ岩魚焼く 古谷 彰宏
道産の水菓子頬張り暑気払い 柿内 昌子
短冊に幼き文字や天の川 深町 牛歩
成田屋の見得一睨み梅雨明くる 青嶋カケス
夏痩せのまずは出でたる顎の線 林田 茶楽
負けて悔いなし向日葵は俯かず 土田 湖亭
茜色残りし水面青田風 土元アブケン
地に影のあからさまなり夏木立 中島 鳶
地唄舞ふ白足袋夏越を祓ひけり 鈴木 占爐
塩飴を一粒含む暑気払い 小池ザザ虫
7月
夏草や錆びたレールの行き止まり 吉田 遊閑
投入堂青嶺抉れるところかな 古谷 彰宏
顔撫でる薔薇の香に酔う昼下がり 柿内 昌子
初夏の候あじさいの花カタツムリ 深町 牛歩
紫陽花のたゆたふ日々に老いかさね 青嶋カケス
武蔵野の野生の森や手毬花 林田 茶楽
短夜の夢に疲れて覚めにけり 土田 湖亭
良き影を拾ひ歩きて夏木立 土元アブケン
紫陽花や海の広がる切通し 中島 鳶
藍集め色移りゆく花四葩 鈴木 占爐
あぢさゐの小径の開け岬馬 小池ザザ虫
6月
トンネルを出て万緑の全開す 吉田 遊閑
万緑に染み込むごとく朝散歩 深町 牛歩
芍薬の添え木頼みに五つ六つ 柿内 昌子
ポーズ取る裸婦の肩ごし青葉雨 青嶋カケス
万緑や足裏に草の匂ひ立つ 林田 茶楽
新緑にふとそそられし樹木葬 土田 湖亭
ラーメンの行列長し夕暮暑 土元アブケン
吉野ケ里中に雲雀野耳澄ます 中島 鳶
万緑や絵師の及ばぬ神の業 鈴木 占爐
軽々とカヌー抱へて川上へ 古谷 彰宏
万緑や伝ひ歩きの一歳児 小池ザザ虫
5月
島囲む海の蒼さや紅椿 吉田 遊閑
青空を覆ひ隠して桜咲く 深町 牛歩
空青く塀よりこぼる雪柳 柿内 昌子
抱卵の古巣に籠り微睡みぬ 青嶋カケス
春陰や黒き大地の慄きて 林田 茶楽
自粛して誰はばからぬ朝寝かな 土田 湖亭
花の香や何処より来る春の闇 土元アブケン
一心に手合はす婆や御開帳 中島 鳶
角打ちに寄り合う老や古巣なる 鈴木 占爐
花に笑む子爵の像や飛鳥山 古谷 彰宏
牧牛の乳重たさう下萌ゆる 小池 ザザ虫
4月
囀りを絶えず頭上に鍬ふるふ 吉田 遊閑
老いた母ひ孫と遊ぶ雛まつり 深町 牛歩
恩師には笑顔を置いて卒業す 柿内 昌子
おぼろ夜やさのさ聞こゆる柳橋 青嶋 カケス
保育器の子の卒業や桜の木 林田 茶楽
遠き日や卒業と言ふ未来あり 土田 湖亭
たんぽぽや次の列車は二時間後 土元 アブゲン
それなりに生きればよしと卒業す 中島 鳶
甲子園の次は神宮卒業子 吉内 雅二
人生に卒業はなし将棋指す 鈴木 占爐
臨月と見ゆる牛引き牧開 古谷 彰宏
坂道を八の字歩き春の雪 小池 ザザ虫
3月
海凪や静止画のごと寒に入る 吉田 遊閑
蕗の薹恋のあと味ほろ苦く 深町 牛歩
手を合わす親と子がいて福は内 柿内 昌子
伊豆の海や下照る波に魞(えり)を挿す 青嶋 カケス
寒風に屈みて丸し蕗の薹 林田 茶楽
廃線となりて幾年蕗の薹 土田 湖亭
蕗味噌は父の好物母の味 土元 アブケン
蕗味噌を舐めてくんろと朝の市 中島 鳶
忍び手や社にひそと母子草 吉内 雅二
蕗の薹一握の春連れて来て 鈴木 占爐
着ぶくれの保線夫去れば無人駅 古谷 彰宏
恙なく傘寿と喜寿や蕗の薹 小池 ザザ虫
2月
厳しきは典座の指図大根漬く 古谷 彰宏
店守る女手ひとつ聖樹立て 吉田 遊閑
喉細る母に一手間蕪蒸し 柿内 昌子
肉じゃがで妻と二人のクリスマス 深町 牛歩
泡盛を醸す浦々鯨浮く 青嶋 カケス
雨夜更け雪と変わりて聖夜かな 林田 茶楽
親と子で聖樹飾りし日の遠く 土田 湖亭
人毎に思ひ様々除夜の鐘 土元 アブケン
青春の日々は懐しキャロル聴く 中島 鳶
産院の明かり消えざる聖夜かな 吉内 雅二
神保町生誕賛歌の漏れきこえ 鈴木 占爐
小流れの流れにまかせ菜を洗ふ 小池 ザザ虫